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これを見た後の『フォックスキャッチャー』は辛い:『アメリカン・スナイパー』

『フォックスキャッチャー』に続いて『アメリカン・スナイパー』のレビューをしていきます。
実は二作品とも同じ日に観に行ったんですけど、その日はかなり辛かったです。フォックスキャッチャーのレビューを見てもらえれば分かるはずですが、完全に物語に飲み込まれてしまったせいで普段の調子になかなか戻ることができなかったんです。スティーブ・カレルが放つ妖気に絡めとられたまま体が解放されない。でも調子がおかしいのはそれだけのせいじゃなかったんです。映画を見る前から明らかに普段の精神状態ではなかった。その状態のまま直ぐに『フォックスキャッチャー』を見た事も原因の一つです。
では『フォックスキャッチャー』を見る前になにがあったのか。全てはその前に見た『アメリカン・スナイパー』が原因でした。
これも実に見ていて心が辛くなる作品でした。


映画は、イラク戦争に4度従軍した実在の狙撃手の物語で、帰国後に彼が書いた自著伝をもとにこの映画が作られました。
見る前は彼の英雄的物語と思っていたんですよ。イラク戦争で活躍したスナイパーの話しだろうと。そしていつものようにアメリカ万歳の話しになるに違いないと。
しかし観に行く数日前に物語をちょっと調べてみたんです。たしかに彼クリス・カイルは伝説的なスナイパーと戦地では呼ばれていました。彼が戦闘に参加するといった安心感だけで仲間の士気が上がるほどの。実際の戦闘の際も狙撃手の存在は必要不可欠で、その腕次第で勝利の左右が確定するほどです。また彼は賞金首として敵からも狙われていました。それほど彼の存在を脅威と感じていたんです。
だが実際のクリス・カイルは、そんな武勇伝がつけばつくほど精神が蝕まれていったようです。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)。彼は退役後もその病に悩まされ続けます。
アメリカには退役軍人の会といった会合があります。退役した元軍人達が悩みを打ち明け合って問題を解消していこうとする会です。
戦争に参加した多くの軍人がこの病に悩まされていて彼らは思うように社会復帰ができないのです。そういった病気は最近になってから社会的に認知されるようになって病自体は昔から存在していました。
でも昔は今ほどケアなどされることがなく、彼らは一般市民から疎外されるか犯罪者となって刑に服することがほとんどでした。シルベスター・スタローンの『ランボー』やロバート・デニーロの『ディア・ハンター』がそうですよね。彼らの人生は涙無くして語れません。本当に悲惨だった。
おそらく彼らには愛国心があったのでしょう。もちろん貧乏だから戦争に志願した者いたでしょう。でも国を愛し守りたい気持ちは誰にもあったはず。それなのにです。
『アメリカン・スナイパー』のクリス・カイルもそんな一人です。
彼はテキサスの陽気なカウボーイの一人でした。両親と弟を想う優しい人間です。そんな彼がある日のニュースで、イラク人が起した爆弾テロによってアメリカ国内で多くの死者が出たことを知ります。
そのとき30歳のクリスでしたが彼は迷う事無く軍に志願します。ここからがかなり凄いことで彼はネイビーシールの訓練につくんです。え?ちょっとまって、ネイビーシールって軍に務めていた精鋭達が選抜されてそこからさらに訓練によってふるいにかけられるんじゃないの?そんなシーンはなかったし、今の制度は変わってしまったんでしょうか、いきなり志願して訓練に参加できるとか?昔、飛び込みで限定解除のバイクの免許が取れたみたいに。どんな人間にも才能が眠ってるといった理由なのかな、プロ野球にも素人が応募できるプロテストがあるんですよね?それと同じで?
まあ詳しい経緯は不明ですがクリスはとにかく頑張るわけです。シールの訓練はそれは地獄のようなもので自ら止めていく人間がほとんどです。でもクリスはめげることなくやり通す。しかも30歳でみんなよりも明らかに太っているんです。それを教官からバカにされ笑われます。でもそれでも諦めなかった。
そんな努力のかいあってついに合格してシールの隊員になります。
書き忘れましたけど、実は弟も参加して兄弟揃って合格してるんです。
カイルは他の隊員たちよりも体力には劣りましたけど一つの才能を開花させます。それが長距離射撃でした。また彼は言います。「生きたもののほうが的に当てやすい」と。
監督のクリント・イーストウッドは彼のことを”運命に捕まってしまった人間”と語っています。
運命から逃れる、運命に逆らう、運命は自分の手でつかみ取る、そういうじゃないですか。運命とはどうとでもなるもんだと。でもどうにもならないほどの力にクリスは捕われてしまった。それほどの行為を彼は行ってきたのでしょうか。それは贖罪とでも?
しかし「生きたもののほうが当てやすい」、そう言ってしまった時から彼は既に逃れられない運命につかまっていたのでしょう。
ここからはイラクでの戦闘シーンが続きます。ここはさすがイーストウッドです、多くの戦争映画を撮って来た経験から緊迫した迫力ある戦闘を描写していきます。現在イーストウッドは84歳、その年でここまでの戦闘を撮れる監督がいるでしょうか。逆に撮ってる監督自身が心臓発作を起しかねない迫力です(笑)
監督は更に醍醐味を加えるべく映画だけのオリジナリティを用意します。それは主人公を狙うスナイパーの登場です。原作にも少し登場するらしいんですが監督は彼を脅威的存在として描いてクライマックスシーンを盛り上げます。単なる実話にしないところが監督の余裕的実力を感じさせます。それでいて映画のテーマからぶれない。最後は重く我々観客に問いかけたまま幕を下ろします。この幕引きは監督の他の作品とも共通する所です。ここがイーストウッド作品の良さなんです。その監督の特徴と原作が抱えたテーマが見事に一致しています。
4度の従軍のなかでカイルは結婚を経験し子供を二人授かります。だが運命は容赦なく彼を苦しめて人並みの幸せを与えることをしなかった。クリスは戦場から戻った平和のなかでもいつも恐怖に苛まれていたのだ。
退役後、彼は退役軍人の会に参加して同じ悩みを持つ多くの仲間を救おうとします。伝説の狙撃手が会に参加することの影響は絶大で、彼は実際にも多くの退役軍人達を救います。しかしそれは自分を救うことでもあったのだ。退役軍人達が尋ねます「なぜ俺たちにこうもつき合ってくれるのかと」。
でもそれが本当の救いの行為であったのかも疑わしいところです。心の不安を無くすために射撃に連れていってますからね。特にクリスにとっては逆効果です。多分銃をいつも身近に感じる事で安心感を得ていたんでしょう。だから運命は容赦なく近づいてくる。
そして結末、運命はついに彼を連れ去っていく。
そこには、ただただもの悲しさがあるだけでした。国を愛し守りたいと願った男がなぜこんな運命を迎えてしまうのかと。
アメリカにはまだ多くのクリスが存在しています。そしてこれからも多くのクリス・カイルが生まれることでしょう。
最後のエンドロールは音のないものでした。その静寂のなかで様々な想いを巡らされる映画です。ぜひ映画を見て思いめぐらせてください。
はたしてアカデミー賞のどれだけの部門賞に輝くのか、前回紹介した『フォックスキャッチャー』ともども注目です。
決戦は明日!!
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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映画レビューから最新作の情報配信まで、映画に関する面白いことなら何でも書いちゃおうといったブログです。また映画フィギュアの紹介とそれを使ったコント劇も作っています。なぜか真面目な話が作れません(笑)と言うか、お笑いのほうが作ってて面白いし。
読んでくれた人に笑って楽しんでもらえる、そんなブログを目指しています。たまには真面目なレビューもするよ(笑)

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