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ガチムチサイコサスペンス:『フォックス・キャッチャー』

アカデミー賞の発表が近づいてきたこともあり、ここ日本でも続々とノミネート作の上映が始まってきています。
最多賞確実とされている『バードマン』は日本では4月10日からの公開です。
その他にも複数の部門にノミネートされている作品があり、今回はそのなかから二つの作品『アメリカン・スナイパー』と『フォックス・キャッチャー』のレビューをしたいと思います。
まずは『フォックス・キャッチャー』からです。
いや〜凄い映画でした。劇場内に張りつめた空気みたいなものを感じるんですよ。ポップコーンを食べる音、咳払い、何一つ音がしないんです。おそらく身動き出来ないんです、映画に見入って硬直してしまって。
自分がそうでしたから。まったく身動きができなかった。買った飲み物に最後まで口をつけることが出来ませんでしたから。もしポップコーンを買ったとしても同じだったでしょう。観客全員がそうだったのでは?
また、映画の内容自体が全編を通して静かに進行していくので余計に劇場内の静かさが際立ったのかもしれません。しかしそれだけではない。恐怖を前にして息を潜めるような、蛇に睨まれた蛙のような、目に見えない異様な妖気に体をがんじがらめにされたような、そんな負の静寂が劇場を支配しているのだ。
その原因は映画の内容にあります。
映画は実話をベースに作られており、デュポン財団のジョン・デュポンが自分で作ったレスリング・チームの専属コーチを殺害した話しを元にしています。
ロサンゼルスオリンピックでレスリングアメリカ代表として金メダルを獲とくしたマーク・シュルツでしたが、その後の彼の人生はけっして恵まれたものではありませんでした。
今も現役ではいるものの名声は過去のものになりスポンサーによる資金援助もなく彼の生活は苦しくなるいっぽうでした。さらに彼にとって悪いことは、マークのコーチであり同じく金メダリストでもあった兄のデイヴの存在でした。世間はマークよりも育成者としてのデイヴを評価していたのです。
そんなときにマークに声をかけてきたのがジョン・デュポンです。ジョンは自分が新しく作ったレスリングチームの選手としてうちに来ないかとマークを誘います。そのときは兄も同伴してという話しでしたが兄はそれよりも前に他のチームのコーチを依頼されていたので結局ジョンのもとへはマーク一人が行く事になります。
きゃっちa

金銭面の待遇は良くリーダーとしてチームを率いることも任され、以前の生活とは違う自分に彼はジョンに感謝をします。
世界的に成功した経営者であり学者として本も執筆している。そんな人間がレスリングと自分に理解を示してくれて、おまけに自分のことを友人と語ってくれるのだ。
「これまではお兄さんだけが評価されてきた。しかしこれからは君が注目をされる番だ」
その言葉は、ジョンへの尊敬の想いを一層高めるのだった。
きゃっちb

経営者として、チームのコーチとして、そして一人の人間として、すべてにおいて完璧で優秀と思えたジョンでしたが、しかし彼の本当の姿が少しずつ顔を覗かせていきます。でも映画を見ている人は初めから気づいているはずです。その人の本性がまだ出ていなくても潜在的に感づいていたはず。じつは知らず知らずのうちに観客の精神は侵蝕されていたのだ。それが最初に言った目に見えない妖気に体をがんじがらめにされるといったやつです。
その怖さを醸し出すスティーブ・カレルの芝居は相当なものです。心が抜け落ちている人間を見事に演じています。
キャッチc

じわじわと観客と劇場内を侵蝕していき遂には隅々にまで充満される狂気ですが、しかしまだなにも起きない。だがひとたびそこにワンアクションを加えると一気に全てが咀嚼されてしまいそうな張りつめた気が劇場内を支配する。まるで命綱無しで綱渡りをするようなものです。
ジョンの全ての行動と言動が怖くてたまらない。絶対にヤバいって思うことが頻繁にあるんですよ。絶対に事を起すぞ、という。でもクモの糸分の命綱のおかげで命拾いをするっていうね(苦笑)本当にギリギリのところで正常を保っているというか。
一番ヤバいと思ったのが、彼って武器収集もしてていて、ある日のこと戦車が庭に運び込まれてくる。でもそれには機銃がついていなくてそれがないと駄目だと突然怒るんです。そこで最初の胸騒ぎが起きます。その後に機銃が運び込めれてくるわけです、そのときのジョンはすでに狂気マックス状態、なにが起きそうなのか分かるでしょ?でも起こりません。何か悪い事が起こりそう、そんな不穏な空気感がずっと映画を支配します。
きゃっちe

ジョンの秘められた狂気の原因がなんであったのかは実際のところ判明していませんが映画では描かれています。それは彼が幼い頃に受けた母親からの教育にあったようです。全ての行いは母に愛されたかったがゆえだと映画は暗に示しています。
チームの人間達も彼の異常さには気づいているけど今更なにも言えません。だって大金持ちのチームのオーナーですし。
キャッチd

ここでもう一人心を病んでいく人が登場します。そんなジョンと一番近くにいた人、そうマークです。
あれだけ信頼して尊敬していた人が実はサイコパスな人間だった。しかもです、一人でやっていくと一度は決めたのにジョンは金にものをいわして兄と兄の家族を呼び寄せて住まわせるんです。それは単に不満からの腹癒せ行為でした。
ジョンを信頼できなくなり兄との確執は強くなる一方。もう誰も頼ることができなくなったマークはスランプに陥って試合にも勝てなくなってしまいます。
きゃっちf

このマーク・シュルツを演じるチャニング・テイタムの芝居もまた凄い。
彼の事を単なる筋肉俳優と思っていたので今回は見直しました。でも今回の役は彼にしか出来ない役なんですけどね。まずはレスリング選手。これはチャニングが持っている筋肉にぴったりの役柄です。そしてちょっと頭の回転が悪いキャラ。自分で成し遂げたいと言いつつ結局は兄がいないと何もできない駄目人間なんです。ある映画評論家が彼の顔をアホ顔と言ってましたが、たしかにそうで、そんなアホな表情と今回の役柄がぴったりはまってました(笑)
でもアホはアホなキャラなりに心の葛藤を見せていて鬼気迫るものがありました。評価も納得の演技です。
ちなみに、ジョンを演じるスティーブ・カレルはコメディ俳優なんです。今回でまったく違った側面を開花させ今後が楽しみな役者と言えるでしょう。
この映画で一番悲惨なのが兄のデイブでしょう。まあ殺されてるわけだから当然なんですけど。でも殺されるような人間ではまったくないんです、それが悲惨というか。
弟思いだし、スランプに陥った弟を最後まで見捨てずにいましたから。ジョンのドキュメンタリー番組に出演するときも演出家からの無理なリクエストに従って「ジョンは私の人生の師匠です」なんてことを言わされてたし。可哀想すぎる。
憶測ですが、ジョンがデイブを殺したのは嫉妬からでしょう。実は自分がなにもない空っぽな人間だったのがデイブの出現によって明白になってしまった。
私は良い人間なのだ、なのに君がいることで全てが変わってしまった、そんな私がなぜこんな仕打ちをうけなければならないんだ?
そんな勝手な思い込みがあの悲劇に繋がったんでしょう。
デイブを演じるのはマーク・ラファロです。なんとハルクのブルース・バナー。最初誰かと思ったほどの役作りでした。チャニングもそうでしたけど二人とも本物のレスリング選手にしか見えませんでした。動きとかが完璧。
この『フォックスキャッチャー』は、この三人の役者達の圧倒的な芝居を堪能すべき作品です。久しぶりに役者の力を純粋に感じることができた作品でした。
きゃっちg

どうしようもなく暗くしずんだ雰囲気と物語の映画ですけど、最後には救いがあります。
マークのその後と現在です。それはエンディングにシーンとして描かれテロップでも語られます。
生まれ変わったマークを見る事ができます。それを楽しみに最後まで映画をご覧ください。

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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映画レビューから最新作の情報配信まで、映画に関する面白いことなら何でも書いちゃおうといったブログです。また映画フィギュアの紹介とそれを使ったコント劇も作っています。なぜか真面目な話が作れません(笑)と言うか、お笑いのほうが作ってて面白いし。
読んでくれた人に笑って楽しんでもらえる、そんなブログを目指しています。たまには真面目なレビューもするよ(笑)

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